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書名: 『死後の真実』

書誌:
原題  ON LIFE AFTER DEATH (c)1991
著者  E・キューブラー・ロス
訳者  伊藤ちぐさ
解説  阿部秀雄
発行  日本教文社(1995年4月15日初版発行)
私評:
 「死の臨床」の世界的権威キューブラー・ロス博士が死後の生について書いたこの小さな本には、他の類似本とは少し違った意味がある。
 今回の地上の生が肉体を持つ最後の生涯になると思われるロス博士には、多分この時期、科学的言語によっていわゆる“死”が存在しないことを地球人類の集合意識に最終的に告知するミッションがあるのではないだろうか。
 数千人もの人の死の瞬間に立ち会い、臨床的な死を宣告の後に再び蘇生した世界各地の二万人も人の記録を調べた博士の言葉の重みがそこにあるからだ。
 だからこそ博士はこう言うことができるのだ。

 <何千年もの間、私たちはあの世に関するものを「信じる」ように仕向けられてきました。しかし、私にとってはもはや信じるかどうかの問題ではありません。知るかどうかの問題なのです。みなさんが心から知りたいと望むのなら、この知識をどうすれば得ることができるのか、みなさんに話してあげることもできます。知りたくなければ、それでいっこうに構いません。みなさんもどっちにせよ死ねば分かることだからです>と。
引用:
 そのとき、私は自分が戦うのをやめ、抵抗するのをやめ、戦士であるのをやめて、抵抗を、ただ安らかで積極的な服従(つまりそのことにただ「はい」ということができること)へと変えるだけでよいのだということに気づきました。
 そうしたとたん、激しい苦痛はなくなり、呼吸するのも楽になりました。口に出してではなく頭の中で私が「はい」と言ったと同時に、体の痛みはなくなりました。そして、私はこの世の言葉では言い尽くせないような再生を、何千回もの死を超えて体験したのです。
 それは、腹部の辺りの非常に速い振動から始まりました。それは全身へと広がっていき、それから自分の目の見える範囲――天上、壁、床、家具、ベッド、窓、窓の外に広がる地平線、樹々、そしてついには地球という惑星全体にまで及びました。それはまるで、惑星全体が、とても速いスピードで振動し、あらゆる分子が振動しているかのようでした。それと同時にハスの花の蕾のようなものが現れ、驚くべきほど美しく、色鮮やかな花を咲かせました。そのはすの花の後ろに、私の患者さんたちがみな口を揃えて言っていた光が見えました。深く速い振動とともに、私は回転しながら咲いたハスの花の中を通ってその光へと近づき、徐々にそしてゆっくりとこの驚くべき無条件の愛、つまり光へと溶けこんでいきました。私はその一部となったのです。
 この光の源へと溶けこんでいく瞬間、すべての振動が止まりました。深い沈黙がやってきてまるで催眠術に掛けられたように眠りにつきました。(P132-134)
好み:★★★
(注:独断と偏見によるお薦め度、または記憶による感動度・ショック度。一押し、二押し、三押し、特薦。)
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