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書名: 『ミュータント・メッセージ――<真実の人>族の教え――

書誌:
原題  Mutant Message Dawn Under (c)1991
発信  アボリジニ(オーストラリア原住民)<真実の人>族
著者  マルロ・モーガン
訳者  小沢 瑞穂
発行  角川書店(1995年6月30日初版発行)
私評:
 大きなサイクルの仕上げを図る最終調整のこの時期、地球上にはあらゆる文化伝統からのメッセージが出揃う。
 これは地球を最終的に立ち去ろうとする最古の先住民族オーストラリアのアボリジニ族が、私たち突然変異族“ミュータント”に遺して行く最後のメッセージだ。
 宇宙からはじめて地球を訪れる訪問者たちは、まず地球の長老格であるアボリジニ族と鯨族に挨拶すると聞いたことがある。これ以上この星に貢献できないことを知ったアボリジニの真の中核<真実の人>族は、永久に地球を後にすることを決断し、地球の後継者たちにメッセージを遺そうとする。著者のマルロ・モーガンは、<真実の人>族の族長<王者の黒鳥>との特別の約束を果たすためにミュータントの世界アメリカに生を享けていたらしい。
 『パパラギ』のツイアビ酋長の場合は最初は生徒の目で、ついで疑問の目で、最後に告発の目で“パパラギ”の世界に対したとすれば、この本のトーンは最初から“永遠の旅人”の自覚を持つ長老の慈悲の目で“ミュータント”の世界に対している。
 この本の中では、何度か「永遠」という言葉が印象深く語られる。
引用:
 この部族によれば、人生とは動くこと、進むこと、変化することだ。彼らは生きている瞬間と生きていない瞬間のことを話してくれた。怒りや失望、自己憐憫や恐怖を感じるとき人は生きていない。呼吸しているからといって生きているとはかぎらない。呼吸の有無は埋葬の時期がきたかどうかを告げるにすぎない。息をしている人がすべて生きているわけではない。ネガティブな感情がどんなものかを知るために試すのはいいが、そこにずっと留まりたいとは思わないはずだ。魂が人の形をとったとき、人は幸せや悲しみ、感謝や嫉妬がどんな感情なのかを知るように定められる。だが、その経験を生かしてどの感情がつらいか、どれが楽しいかを学ばなければならない。
 つぎに私たちはゲームやスポーツについて話した。私はアメリカ人のスポーツ好きについて話し、野球選手が教師よりずっと高い給料を取っていることを話した。野球がどんなスポーツかを説明しようと私は言い、みんなで一列になって全力で駆けっこをしようと提案した。いちばん速い人が勝つと言ったとき、彼らは黒くて大きな目で私をじっと見つめたあと互いに見つめ合った。ついにだれかが言った。「だけど、ひとりが勝ったら残りはみんな負けるんだろう。それは楽しいのか? ゲームは楽しむためにあるんだよ。どうしてみんなでそんな競争をするんだろう。それで勝者が本当に強いと思うんだろう? その習慣はよくわからないよ。あなたの国ではうまくいくのか?」 私はただほほ笑み、「ノー」というかわりに首をふった。(p139)
好み:★★★★
(注:独断と偏見によるお薦め度、または記憶による感動度。一押し、二押し、三押し、特薦。)
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