セイボム その器械やそれが乗ってた台車について細かいことでお気づきになったことはございましたか。
患者 正面にメーターがついていた覚えがあります。多分電圧とか電流とかワット秒とかそういうことを計るメーターだと思いますね。
セイボム そのメーターはどんな感じのものかおわかりになりましたか。
患者 四角い形で針が二本付いてて、一本は固定される方で、もう一本が動くようになっていました。
セイボム 針はどんなふうに動きましたか。
患者 かなりゆっくり起きてくるようでしたね。電流計とか電圧計とかと違って、速い動きはしませんでしたよ。
セイボム 針はどのくらいのところまで行きましたか。
患者 最初は時計で言えば、11時から12時当たりを指していました。二回目は12時を超えるところまでいって、三回目は1時半くらいまでいきましたね。(p165)
一般的な医学的な見地から考えると、本患者が行った蘇生場面の自己視的描写は、集中治療病棟内で熟練した専門家が心肺蘇生を行う際予測される内容と正確に一致している。除細動装置に充電が行われているときに、そのメーターの「固定される」針と「動く」針について患者は的確に描写しているが、その点に私は特に強い印象を受けた。この二本の針の動きは、この装置が使用されている場面を実際に見たことがなければ分からないものなのである。(p170-171)
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