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書名: 『絶対無の戯れ』

書誌:
著者  ダンテス・ダイジ
発行  森北出版(1990年7月27日第1刷発行)
私評:
 著者は一九八七年に三七歳で遷化した座禅老師にしてタントラ・ヨーガ・グルという異色の雨宮第二師。
 一七歳で神に目覚め、一八歳で道元直系の只管打座によって身心脱落、大悟徹底。古神道の大要を体得し、臨済宗において見性を許され、インドでババジ直系のクンダリーニ・ヨガの究極の解脱に達したというまさに求道の権化のような方だ。

 「言葉の中に冥想はないだろう
  しかし冥想の中には
  言葉もある

  今・ここで
  言葉は神になった」

と言われる。要は、このささやかなリストの中にどうしても次の詩を入れたかっただけだ。言葉が与えうる最大限の安らぎを与えてくれたから……。
引用:
 だいじょうぶだよ 君は必ず死ぬ

 だいじょうぶだよ
 君は必ず死ぬ
 死んだら
 あたたかい夜のぬくもりの中で
 君と僕は
 君と僕とのいのちを
 あたためあう
 夜闇の森のフクロウも
 僕達のいのちだ
 フクロウの鳴き声が
 静かに
 僕たちの瞳をしめらすことだろう

 だいじょうぶだよ
 君は必ず死ぬ
 死ぬべき君には
 もうどのような恐れも無用だ
 そして僕達は
 時間を忘れた夜明けの
 すがすがしい大気を吸い込む
 まるで初めて
 大気を吸い込んだように
 僕達は
 夜明けの息吹を感じることだろう

 だいじょうぶだよ
 やがて死ぬときが来る
 僕達の宇宙ゲームを終わらせて
 夢のない夢の眠りに
 やすらかに帰る時がくる
 初めがないここには
 生も死も
 初めから夢にすぎなかった

 だいじょうぶだよ
 君は必ず死ぬ
 さぁ今 君は君自身に帰る
 帰っておいで
 君自身である
 僕自身の胸の中に

 人々は
 どういうわけか
 死をいみ嫌っていた
 だが だいじょうぶだよ
 君もやがては死ぬ
 死が
 君にすべての生命達との
 ふれ合いを教えてくれる
 だいじょうぶだ
 君は死なないのだから
 生と死の中をつらぬき
 やさしさが
 いつも響いていた
                   (p66-69)
好み:★★★★
(注:独断と偏見によるお薦め度、または記憶による感動度。一押し、二押し、三押し、特薦。)
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