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「湘南名画鑑賞会」会報 No.3

映写窓の後ろからB

第五回上映会(上映映画『戦艦ポチョムキン』)
1986年6月20日(金)、場所:藤沢市民会館小ホール

 映画好きと言っても、十人十色。どんな映画が好きなのか、映画の何が好きなのかは、人それぞれで違うのだろうと思います。
 唯一の共通点を求めれば、映画を観ることが好きと言うことでしかないのかもしれませんし、あるいはそれさえもあやしくて、映画をさっぱり観ない“映画好き”の人だっているかもしれません。
 また、映画好きが集まって昔のいい映画を観てみようという場合でも、観終わってさてどうしようということもなかなか難しいと思うのです。

 好みの差ということはあるとしても、いい映画はたしかにいい映画なのですが、批評家でもない私たちが、さてあらためて、観終わった映画の鑑賞会というか品評会みたいな会を持とうとしても、人を感心させられるようなことが言えるわけでもありませんし、またそんなことが言えたところで仕方がないという気もします。
 結局みんな一堂に集まって、共通ではあっても一場の夢を観ていたわけですから、醒めてからあらためてその話をするというのも何だか気恥ずかしいような感じもあります。

 何だか「ないないずくし」になってしまうのですが、結局“名画鑑賞会”の役割とは、今のところ、昔の映画を観られる場を提供するということに尽きるように思うのです。

 ただ、こうも思います。
 観終わって、慌ただしく帰るというのではなく、何となく寝覚めの余韻を楽しむような具合に、コーヒーでも飲みながら、しばらくぼんやりしていられる空間があってもいいな、別に次回の呼び込みのベルが鳴っている映画館ではないのですから、そのまましばらく椅子に腰掛けてぼんやりしていてもいいし、あるいは少し人前で喋ってみたいような気分になっている人がぼそぼそと話し出してもそう異様ではない、他の方はそれをうるさがるでもなく、頷きながら聴いている……と、まあこんな夢のような余裕のある空間を空想するのです。

 一人一人住んでいる世界も、年齢も、またそれに応じて夢も、希望も違うといった人々、普通の意味ではまったく無関係な人々が、たまたま同じ映画を観たということをきっかけにして他人の夢を聴くというのも何だかとてもすてきな気がするのですが。

 映画が終わるとコーヒーが出て、それを飲んで帰ってもいいし、三〇分くらい座っていてもいい、そのうち人数が少なくなるにつれて、自然にお喋りが出てきてもいい。その場で次回の上映作品の候補をあげてもいい、とまあ、そんな夢のようなことを考えます。

 そんな意味では、この藤沢市民会館の小ホールというのは、いかにも大きすぎる空間とも思えます。
 これは確約はできないのですが、近い将来、そんな五〇席足らずの小さなあたたかい空間を持てるかもしれないとも思っているのですが。乞うご期待。

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