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「湘南名画鑑賞会」会報 No.6

映写窓の後ろからE

第八回上映会(上映映画『忍ぶ川』)
1986年12月21日(日)、場所:湘南名画鑑賞会サロン

 前回『第三の男』はかなり好評でした。
 映画のタイトルが出てくる最初の場面に映っていたもの、あれ何だか分かりましたか?
 実は私は一回目観たときはブラインドかな、なんて思っていたのですが、二回目に、ああ、これがアントン・カラスの弾くチターなんだなということが分かりました。
 誰にも確かめたわけではありませんが、多分間違いないと思います。

 そしてあののっけからのナレーションのテンポ。その前の『麦秋』のテンポが残っていた耳には、ちょっとびっくりするような速さでしたね。

 『第三の男』はリールにして二本なのですが、一本目の最後はジョゼフ・コットンとアリダ・バリが運転手の家を訪れる夜の場面なんです。
 あの子供が、「パパ、この人が殺したんだよ」というちょっと気味の悪い場面です。
 つまり、一巻目ではオーソン・ウェルズは出てきていないんです。
 それでいて、一度「ハリーのテーマ」に乗って出てくれば、やっぱりこの男がこの映画の主人公なんだなと思わせるところが映画の狙いでもあり、オーソン・ウェルズの芸なんでしょうね。

 あの遊園地での会見の場面、憶えていますか?
 画面のずっと向こうから男が一人、速足で近づいてきて、それがハリーになり、目の前で「やあ」と言いながら手袋を取り、それでいて二人とも握手しようとはしないというあの一連の動き、まるで一つのエネルギー体の出現というふうでした。
 あの息もつかせず畳みかけるようなテンポというのが、あの映画の身上なんでしょうね。

 そして最後の、あの銀杏並木の長回し、いかにも映画を観たという感じでした。

 明かりがつくと、すぐにコートを着て帰られる、あるいは、コーヒーを飲んで何となく納得して帰られる、あるいは、日曜日の夜の会のように、やおらコーヒーを囲んで皆さんで話をされる。
 少しずつ上映会の感じも決まってきているようです。

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