目が醒めると、枕元の格子縞の障子が明るかった。
顔を洗って、障子の外の濡れ縁にしばらく座り込む。
柔らかい稜線の山々に周りを囲まれて、この建物(「あやべ青少年の家」)
はわずかに小高く盛り上がった開けた空間の中心に位置しているらしかった。
目の前の庭とその向こうに広がる畑、その向こう側に、微かに蒼黒い樹々の
形を表して視界を限った山々には夜明けの薄靄がかかって、まるでお盆のよう
な形に、丸くこの開けた大地を守っているようだった。
その朝、何よりも不思議に思われたのは、大きな鱗をめんめんと連ねて薄い膜
のようにそのお盆の上をびっしりと覆って、ゆっくりと移動して行く不思議に
やわらかい雲だった。
日本の神々のいます所。
眼前に展開する朝靄の光景を眺めていると、そんな言葉が自然に浮かんで来
た。
辺りがだいぶ明るくなって、サンダルを履いて外に出る。橋の所にいたアナ
ンドギートと並び、あらためて「綾部青少年の家」の大地を覆う雲の姿を眺め
た。
「日本の神様も頑張ってるね」という言葉が思わず口から出たのは、最近読
んだばかりの『ヤハウエの巨大潮流預言』という本のことが頭に残っていたか
らだった。
アナンドギートは例のごとくにっこりと納得の相槌を打った。
荒唐無稽とも言える荒々しい話の前に、対する眼前の光景はいかにも優しく柔
らかだった。
食事を終えて、初めて中庭を挟んだセッションのホールに入る。
それぞれ座布団を手にして位置を決める人たちが増えるに連れて、久しぶり
のグループが始まっていくのが感じられた。
前日の夜と今朝と、サガプリヤの姿は見かけていない。
セッションホールに人が一杯になってから、薄い水色の上下に白いベストを
羽織ったサガプリヤが姿を現した。
全員の期待の高まる中に、サガプリヤは緊張の様子を隠さなかった。
何となくこの期待が落ちるということがこのグループのゴールになるのでは
ないかなどという、うがった感想が頭をかすめた。
やわらかい音楽がかかってみんなが身体を動かし、少しずつグループが始ま
って行くようだった。
モンジュに声を掛けられ今回この綾部に来ることについては、私にはまった
く迷いはなかった。
サガプリヤのグループについて知っていることと言えば、『TSUKUYOMI』に
載ったモンジュのプーナ体験記がほとんど唯一の情報だったが、久しぶりのグ
ループに何かを期待したというわけでもなかった。
今回このグループに参加したことも、どちらかと言えば綾部の土地を一度踏ん
でおきたかったというのが正直なところだった。
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